鳳凰山の火事場跡から眺められる白峰南嶺 |
三峰岳以南の仙塩尾根 |
16塩見岳3047m・17仙丈ヶ岳3033m・35広河内岳2895mと今回辿る
大籠岳・笹山・北荒川岳・安倍荒倉岳・新蛇抜山です。
一日目
南アルプス林道の広河原で北沢峠行きのバスに乗り野呂川出合で降ります。
治山工事用林道を2時間30分歩いて両俣小屋に到着、ここでテント泊です。
途中台風の爪痕を散見、大規模な修復工事が行われていました。
両俣小屋は一度訪ねてみたいと思っていました。
登山者より釣り人の利用が多いようですが、テント場は水場やトイレも近く、
良く整備され思った通りの心地よいテントサイトでした。
二日目
夜明けとともに行動を起こし、起きたての身にはシンドイ登りで一汗かくと
野呂川越、稜線です。探す予定の2315.3m三角点はすぐに見つかりました。
展望のない樹林帯を緩やかに上っていき三峰岳が望める開けたところに出て一服します。
ここで逆方向からの登山者がやって来てことばを交わしましたが、
今回出会った登山者はこの人が最初で最後、この後は私たちパーティ三人だけの静かな山旅になりました。
間ノ岳 |
岩稜帯ではウラシマツツジの紅葉が始まり這松とのコントラストが鮮やかです。
写真を撮りながらがらゆるゆると進みます。
三峰岳は気になる山でした。2999mもありながら山としての格はなく稜線上のコブなのだそうです。
南アルプスの主峰をあまねく素晴らしい展望、
白峰南嶺と仙塩尾根を繋ぐ尾根の起点でもあり、上等の愛すべきコブです。
三峰岳でのんびりした後は熊の平小屋に下ります。
メンバーに疲れが見えたので、営業を終えた小屋の人影のないテラスを借りて一服します。
雪投沢の幕場まで辿りつけない場合を想定して元気な二人が2.5Lづつ水を汲むことにしました。
登山道直ぐ上に、山頂三角点のある安倍荒倉岳・標高2693mは確認できましたが、
標高100番目の新蛇抜山・標高2667mは不確かでした。
ここらあたりと思われる地点で登山道から草付の傾斜地を5m余り登ると、狭い尾根筋に出ました。
狭い尾根というよりバンドを南に5~6m進んだ猫の額ほどの裸地に小さなケルンが積まれていました。
相棒に確認して貰い、ここだねと決めたのでした。
やはり雪投沢には届くことができなくて2542ピークと北荒川岳の中間地点の樹林帯に平地を見つけて
テントを張りました。
三日目
北荒川岳の2段階の上りは朝一番には遠慮したいところですが、頑張ります。
それにしても西面の崩壊は大規模です。塩見岳の堂々の山容と並んだ北荒川岳の崩れゆく大地、
天地自然の輪廻を実感します。
登山道が東山腹を巻くようになると西面の惨状は知らず、豊かな森が東俣へ延び下り、
朝日を浴びる間ノ岳と農鳥岳に白峰南嶺が凛と眺められました。
2719ピークの先から稜線を離れハイマツの山腹へ雪投沢に降りていきます。
東俣へ登山道が通じていたのは今は昔、沢の中を辿ります。
標高差はおよそ800m、迫る山の急斜面から転がり出た倒木や大小の岩が狭い沢に
ばっこする状況は厄介でした。
ルーファイの醍醐味(?)を味わいながら入渓から3時間半かかって大井川東俣に出会ました。
ひざ下の水量を東俣左岸に渡り、雪投沢では落ち着いて休むことができなかったので、
明るく開けた河原で遅い昼食を摂りました。
沢靴を登山靴に履き替えて高台の樹林帯にある池の沢小屋に寄ってみました。
重たい引戸を開けると営業小屋だった当時が想像できないほど痛みが激しく、
土間を挟んで向き合った床は両方とも壁側に傾いていました。
樹林に建つため薄暗く開放感はありませんが、まあ避難小屋としての利用に支障はなさそうです。
この山旅の主目的の池の沢経路は、最初は沢通しに倒木を利用して濡れずに辿ろうと試みますが
水量が多くて断念、右岸に切られているはずの古のルートを探すことにしました。
初めのうちは藪やガレ場で頻繁に立ち往生していた道形でしたが、標高2200mを過ぎるころから
消えかかったペンキマークを目にするようになり、薄い踏み分けが連続するようになりました。
標高2500m辺りの平坦地で幕営予定でしたが、きょうも暗くなって時間切れ、
池の沢池手前の樹林帯(標高2320m)に平地を見つけ落ち着きました。
四日目
出発して間もなく突然沢音が途絶えたと思った次の瞬間忽然と現れた池。
「あなたが池の沢池なのね!」直径50mはあるでしょう、対岸に小さい白い流れが落ち込み、
無数の木の葉をそっと浮かべる水面、静寂が包んでいました。
落ち口を流倒木や枯葉が積んだ天然堰でせき止められた池の水は伏流水となって沢へ流れでていたのです。
突然沢音が遠ざかったのはこの所為でした。
澄んだ水が池畔の木立を写し込み静まり返る池の風情、かつて「南アルプスの真珠」と呼ばれた「池の沢池」、
古の姿のままに出会えたのでした。
気泡を包んだ白い流れは表土が流されて露出した岩を伝い、岩に張り付いた苔はしたたる清水を含み、年月をかけて翡翠色にふっくらと厚みを育んできたようです。
苔の沢の感動が覚めやらぬ間にテンバに予定していた標2500mのハイマツとダケカンバに囲まれた小空間に到着です。
焚火の跡がありこの場所を知っている人なら必ずここでテントを張るに違いないと思えるまたまた素的な処でした。
しかしここから暫く行った標高2550mでルートを外してしまいました。
この辺りは笹とハイマツと樺の藪でハイマツの右端・大籠岳側にルートがあったようですが、
私たちは広河内岳山頂から延びる尾根の開けたゴーロをめざして笹とハイマツの藪を20分ほど漕いで登りました。
等高線の開いた尾根を広河内岳の山頂にでることも可能でしたが藪の有る無しが読めないので、ルートの沢をはっきりと見下ろすダケカンバの疎林から正規のルートに戻ったのでした。
三角形の二辺を行く一時間のアルバイトでした。
広河内岳の鞍部で予定の雨が降ってきました。
雨具をつけて白峰南嶺を南下します。ガスが湧いて楽しみの展望を奪われると同時に
登山道の現在地確認が困難になります。
大籠岳のクジラの背中の広尾根では尚更です。①直近②2772ピーク③大籠岳の3点を夫々が分担して照合しながら辿ることにしました。
歩きはじめると間断なく積まれたケルンがあり、コンパスの必要はなかったかもしれませんが、
三角点ピークと東海パルプの大籠岳山頂標識(標高2767㍍)に迷うことなく到着しました。
降り続く雨に休憩もそこそこに白河内岳へと進みます。
小さなアップダウンを繰り返して二重山稜地形を抜けると岩礫の白河内岳山頂です。
山頂左奥から南東にでる尾根に乗りしばらく下った肩(標高2765m)の開けた平坦地で一服します。
ここは幕場になっている様子です。
白河内岳から笹山へはガレと樹林とハイマツ帯の変化に富んだルートでした。
極端にケルンが少なくなり大岩の転がるハイマツ帯にはピンクテープが付けられ、
2682ピークから南を向いていた稜線は徐々に東に向き始めました。
平坦なハイマツ帯から急傾斜の樹林帯に入り再び緩やかなハイマツ帯に戻って、
最後に岩稜を登ると東海パルプの立派な標柱の立つ笹山北峰にひょっこり出ました。
南峰へは樹林帯を10分足らず、これまで見てきた東海パルプの標柱に代わり、
高さ2mほどの柱に南峰と記されていました。三角点を確認します。
15時を廻ったので下山途中で日没になるのは明らかでしたが、
本日中に近頃拓かれた笹山ダイレクト尾根(東尾根)で奈良田に下ることにしました。
尾根通し少しの緩みもなくトレースするので当然ながら急激下りになるはず!
急傾斜の連続、17:15標高1603mの水場標識地点でヘッドランプを点灯、
傾斜も点灯も想定内とはいえあと3時間この状態が続くと思うと難儀です。
標高1550m付近で直進したルート取りに違和感を覚えます。
今まで踏んできたのとは違う土の感触、柔らかいのです。
1600m水場標識のある地点で北東に延びる尾根を回避、東の主尾根に乗ったと思ったのですが地形図で確かめると、直進するルートに標高1560mで枝沢が入って主尾根は沢の南にあります。
ここは直進ではなく右に進むところでした。
ちょうど等高線が開いたところで足場も良かったのでそちらに進みそうになったようです。
その後は順調に下山できたのですが、一般道だという油断もあって、雨と日没で邪魔くさくなり地形図を仕舞い込んだ事やテントを持っていながら無理して下った点など反省しています。
失敗や反省のあったこの山旅ですが学んだものも多く、パーティのAさとBさんには感謝の気持ちでいっぱいです。
思い出に残る一番の山旅になりました。
10/02 八王子8:34=9:28甲府10:00=11:56広河原12:15=12:30野呂川出合=15:50両俣小屋
10/03 両俣小屋6:15=7:25野呂川越…10:09間ノ岳を望む…11:35三峰岳11:50…13:20熊の平小屋
…14:42安倍荒倉岳…16:30幕営
10/04 幕営地6:10…6:50北荒川岳…7:02北荒川岳テント場(元)…雪投げ沢…13:51池の沢小屋
…17:30池之沢幕営地
10/05 池の沢幕営地5:40…5:45池の沢池6:10…最良の幕営地7:27…7:50藪の始まり…
岩峰の上8:18…11:57大籠岳…14:52笹山北峰…15:00笹山南峰15:15…20:45笹山登山口
標高順位 74位大籠岳2767m/83位笹山2733m/91位北荒川岳2698m
93位安倍荒倉岳2693m/100位新蛇抜山2667m
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