八甲田は温泉旅行で出掛けたのが最初でした。
気に入って二度三度と足を運ぶうち、ある日蔦七沼を歩きました。
七沼の中で赤沼は他の沼や散策路から離れた一時間程ぶなの森深くに入った所にありました。
畔に近づける一ヶ所を除いて、深い森が水際まで覆う神秘の沼でした。
沼の畔の朽木に腰を下ろして、水没林の枯木や奥に広がる森をゆったり眺めていたその時、突然水面にさざ波がたち白波が起こるとみるみる大きくなって私達に向かって押し寄せてくるではありませんか!
とっさに立ち上がり後ろに跳びのこうとした次の瞬間、みな面は嘘のように静まって、元の神秘の沼に戻っていきました。
恐ろしさに声も出ない、あっという間の出来事でしたが、あれはヤマセ?
私たちは風を見たのでしょうか!
そのうち八甲田大岳に上りました。
山歩きを始める随分前のことでしたが、山がいいものだと教えられた最初の山登りで、なにより夫と上った数少ない山です。
青森の酸ヶ湯温泉登山口からネマガリタケとダケカンバやブナの樹林を行き、
噴気ガスがのぼる地獄湯ノ沢を渡りました。
青森トドマツの草むらにはゴゼンタチバナの群生、
仙人岱湿原に入ると清楚なヒナザクラの白い花邑が風にそよいでいました。
花の直径は1㎝あったでしょうか、“山ってこんなに美しい花が咲いているの”
高山植物の繊細さ美しさ健気さに心を奪われた最初でした。
湿原の奥に清水が湧いていて口に含むと甘い味がして幸せな気持ちになりました。
山って素敵!
もっともっと先に上ってみたい気持ちでいそいそと夫の後ろに続きました。
大岳の肩にある鏡沼まで登ると北海道が見えるというので目を凝らしますが、
津軽海峡の海原が広がるだけで陸地は見えませんでした。
鏡沼の水面に奴さんの様な芽をだした植物“これなぁ~に”?
後にミツガシワだと判ったのでした。
山頂から大岳避難小屋を辿るとホシガラスに出会いました。
私たちの前を前をと飛んでいくので道案内されているようでしたが、
ホシガラスはハイマツの実の餌場を移動していたようです。
花が咲き池塘が点在する湿原庭園の上毛無岱から下毛無岱に下る階段の上に出ました。
ウーン…! 夫も唸る絶景でした。
それから季節を変えて三度上りましたが、残念なことに北海道は一度も望めませんでした。
その後子供たちが独立したのを機会に私は山登りを始めました。
夫は剣道八段位めざして稽古に励んでいましたが、武道学科の学生さん達相手の荒修行で膝を痛め、剣道も山登りも断念しなければならなくなりました。
山に出掛ける私を快く送り出してくれる夫に感謝していますが、
やっぱり、山で一緒に上るご夫婦に出会うと羨ましくなります。
百名山100/3座
2004年以前の登山
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