山のリスト

2014年8月26日火曜日

赤沢山・赤岩岳・西岳 北アルプス喜作新道 3

風が強く時折ハイマツを掴んで屈みこむほどの強風が抜けます。
西の穂高連峰や槍ヶ岳のガスはなかなか切れません。
そればかりか北鎌尾根にもガスがかかり始めて状況の好転は望み薄のようです。
 
 
 
左手(東)の燕岳から常念・蝶ヶ岳の縦走路はクリアーに快適そうです。


振り返る西岳と北鎌尾根の間から赤みを帯びた山容をのぞかせるのは水晶岳でしょうか。



赤沢山に上る人は他になく独り占めの稜線漫歩です。
不遇の山、南北に長い赤沢山の山頂からの眺めは360度です。惜しむらくは槍の穂先を隠すガスが消えてくれたら。
山頂には三等三角点が置かれ、かつては山頂標識もあったようで、支柱だけが残っていました。
このケルンはいつ誰が積んだのでしょうか!


 
槍ヶ岳に登った仲間は今どの辺りでしょうか、本来ならば正面に槍の穂先が見えるはずです。
仲間に手を振りたかったのに、見えない山頂に向かっては不思議と手を振る気になれません。

待っても晴れないガスにしびれを切らして下山することにします。
往復2時間かかりました。
立木やトラロープの補助があって幸いロープは使用せずに済みました。
ハイマツに覆われてはいますが、丁寧に探せば地形の弱点をついた踏み分けがあります。
取り付きの岩から一旦左に進んで1つ目の崩壊地の左端を下降、崩壊地の下部で大岩を右に回り込んで
さらに右にトラバースして右の尾根に乗ります。
尾根を外さないように急降下して鞍部に出ます。
小岩峰を右から巻いて大崩壊地の尾根上に上り、さらに尾根通しに上ると赤沢山稜線にポンと出ます。
普段、読図でバリエーションルートを経験していれば「案ずるより産むが易し」かもしれません。
しかしルーファイを間違えると厳しいことになるようで、ガレ場のトラバースを強いられた先達の記録がありました。
また自然条件や体調・経験によって難易度は変わりますから、実行には慎重な判断が必要です。
最初から最後まで緊張を切らすことのできない登山でした。
ただこの緊張がこの山の醍醐味ともいえますので、赤沢山登山は特別自己責任を伴います。


08/19 10:30上高地…河童橋10:40…徳沢12:50…一の俣15:10…槍沢ロッジ(宿泊)

08/20 槍沢ロッジ5:15…6:15大曲6:20…7:20水俣乗越7:25…ヒュッテ西岳8:38…
      2686ピーク8:57…9:09一つ目の崩壊地…二つ目の崩壊地上部トラバース9:14
      9:17尾根の急下降…鞍部9:23…9:24常念岳の展望…9:28瘤の岩頭を巻く
      …三つ目の崩壊地の上部尾根9:33…赤沢山の上り…9:43赤沢山稜線…9:55赤沢山山頂10:10
      …10:55赤沢山下山2686ピーク…11:04ヒュッテ西岳…11:37赤岩岳直下登山道11:45
      …12:05赤岩岳山頂12:15…12:25喜作新道…12:43ライチョウの親子12:51
      …13:20西岳山頂13:30…14:28水俣乗越…15:10大曲15:25(槍ケ岳組とバッタリ遭遇)
      …16:10槍沢ロッジ(宿泊)
   
08/21 槍沢ロッジ5:45…6:13二の俣…6:20落石注意箇所…8:08穂高岳展望…8:50徳沢9:00
     …古池…9:30ハンドパワー…11:20河童橋…11:45バス=沢渡=入浴=奈川(そば)=自宅

つづく



2014年8月25日月曜日

赤沢山・赤岩岳・西岳 北アルプス喜作新道 2

テント場の最南端にある下降点の目印の岩です。
奥に見えるピークが赤沢山です。

ツェルト・コンロとガス・水・食料・防寒着を確認して、ヘルメットとハーネスをつけてロープを携行、
短パンに継ぎ足して長ズボンに、いつもより丹念に出発準備を整えながら気持ちを落ち着かせます。
槍沢側から強い風が吹きつけますが、ルート上はハイマツの藪なのでもしもの時はハイマツが役立つはずです。
最後にコンパスを合わせて、胸の前で両手を合わせ、目印の岩を右に入ります。


取り付きの岩の基部を右から左に巻いて踏み分けに入ったところから振り返えります。
このまま下っていくと直ぐにハイマツに覆われますが、足元に踏み分けはしっかりついています。


最初の崩壊地の左端(トラロープの右)の踏み分けを下って行くと崩壊地の下部に出ます。
崩壊地を下部から見上げるとこんな感じです。(帰路撮影)


右横に写真の岩が見えたところで涸れたハイマツを踏み越し、右下方に移動して、岩の基部を右に回り込みます。
回り込みながら岩を振り返ると赤いテープが付いているのに気付きました。



岩を回り込むと2ツ目の崩壊地の頭に出て、右の尾根上にトラバースします。
黄色いテープとトラロープが下がっています。
細心の注意を払い、足場のホールドや草木のホールドを工夫して利用します。


尾根に乗ると南岳方向が望めましたが、稜線には無粋なガスでています。



尾根は痩せていて急ですが、トラロープが下がっています。(ロープを使うならここでしたが)
トラロープは滑りやすいので補助的に使って、周りの立木や岩の窪みを見つけて3点支持で注意深く下ります。


最後にハイマツのトンネルを抜けると鞍部に出ました。
東側は崩壊地ですが、西側が平坦になっていてそこにダケカンバの木が一本立っていました。

知りあいは、地形図を見て、雪のある時期だったらこの鞍部に乗越沢の登山ルートから上ってこられそうだと言っていましたが…?

核心部が通過できたので、余分な水と食料、ロープをここにデポしました。

次は鞍部の瘤を越えます。
左手崩壊地越しに常念岳が青空のもと端正な山容をみせています。


振り返ると取り付き岩から鞍部まで2686ピークの下降ルートの全容が望めます。
画面左隅に曲がったダケカンバの木が見える辺りが下降点の鞍部です。
取り付き岩からほぼ直線的に下ってきたことがわかります。


鞍部の瘤は下部はハイマツの踏み分け、上部は岩棚になっていてホールドはがっちりしています。
3点支持で越えていきます。



3ツ目の崩壊地の頭(瘤の山頂)を右から巻きます。


 
岩瘤を巻き終えると地形図にある大崩壊地が現れます。
崩壊地の際を左から右へ半分崩れた尾根上に渡って、ハイマツの踏み分けを進むと、赤沢山の登りになります。


ハイマツと岩の尾根はホールドがしっかりしているので浮石に気をつけて進むと、赤沢山の北端の稜線に出ました。
山頂は奥の高みのようです。
なだらかにハイマツの踏み分け道を進みます。

2014/08/19 10:30上高地…河童橋10:40…徳沢12:50…一の俣15:10…槍沢ロッジ(宿泊)

08/20 槍沢ロッジ5:15…6:15大曲6:20…7:20水俣乗越7:25…ヒュッテ西岳8:38…
      2686ピーク8:57…9:09一つ目の崩壊地…二つ目の崩壊地上部トラバース9:14
      9:17尾根の急下降…鞍部9:23…9:24常念岳の展望…9:28瘤の岩頭を巻く
      …三つ目の崩壊地の上部尾根9:33…赤沢山の上り…9:43赤沢山稜線…9:55赤沢山山頂10:10
      …10:55赤沢山下山2686ピーク…11:04ヒュッテ西岳…11:37赤岩岳直下登山道11:45
      …12:05赤岩岳山頂12:15…12:25喜作新道…12:43ライチョウの親子12:51
      …13:20西岳山頂13:30…14:28水俣乗越…15:10大曲15:25(槍ヶ岳組とバッタリ遭遇)
      …16:10槍沢ロッジ(宿泊)
   
08/21 槍沢ロッジ5:45…6:13二の俣…6:20落石注意箇所…8:08穂高岳展望…8:50徳沢9:00
     …古池…9:30ハンドパワー…11:20河童橋…11:45バス=沢渡=入浴=奈川(そば)=自宅

 つづく






2014年8月24日日曜日

赤沢山・赤岩岳・西岳 北アルプス喜作新道  4


赤沢山を下山すると11時でした。
赤岩岳に上っても往復2時間とみて、明るいうちに槍沢ロッジまで戻れそうです。
喜作新道を北上して先ず赤岩岳の取り付きを見極めなければなりません。
地形図と実際の地形から赤岩岳を特定、取り付きはここら辺りと見当をつけますが、
確実を期すために先達のブログにあった赤岩岳の標識を確かめに先に進みます。
いくらも行かないうちに大学生のパーティと出会いました。
すれ違いの間に「あの~赤岩岳の標識は確認されましたか?」と思い切って彼らに聞いてみました。
「30mくらい手前にありましたよ。」
「やった~」思わず洩れた感嘆に、「どうしました?」と聞き返されます。
「赤岩岳を探しています。」と先頭の彼に答えると、最後尾にいた別の彼が、
「あれが赤岩岳だよ」と私が目星をつけたピークを指さしました。


標識を確認するまでもなく学生さんとの会話で赤岩岳が特定できましたが、赤岩岳の写真を撮り忘れたことに気づきました。
戻った位置からだと赤岩岳山頂は、草付きの奥に隠れてしまって見えないのです。
稜線右のダケカンバと左のダケカンバの間のこんもりした部分がそれらしいのです。


直下の登山道から改めて山腹を見上げながら、どこを上ったものかなかなか決心がつきません。
草付きの傾斜は急で、真下を登山道が通っているので落石は厳禁です。
結局植生に影響の少ない石棚になったところから、往来のないのを確かめて空身で這い登りはじめましたが、
中間部のザレが滑りやすく落石を起こす危険もあるので左のハイマツと灌木の茂みに逃げ込みました。
そこには人が歩いてる形跡がありました。


三等三角点が立つ山頂は崩壊途上のようです。
ネットで赤岩岳の倒れた三角点の写真を見ていたのですが、誰かが起こしてくれたようです。
北鎌尾根を正面に望んでも、槍の穂先をかくす芸のないガスの湧き方では迫力を欠きます。


これから向かう西岳を北側から眺めます。
奥に南岳の天狗原が見えていますが稜線のガスは相変わらずべったりと動きのない風情なしです。


裏銀座の山並みを眺めます。
鷲羽岳やワリモ岳の辺りに雲がかかりはじめていますが水晶岳~野口五郎岳~三ツ岳~烏帽子岳が連なり、烏帽子岳の後に雲を被った立山と剣岳も見えています。



短時間の登下降にしては疲れました。
帰路、横尾の「遭難事故の掲示板」に《赤岩岳滑落》の書き込みがありましたが、さもありなん、一歩間違えば危険なところです。

登山道に降り立つと常念岳が大きく立派です。一瞬、やっぱりピークハンとより縦走の方が楽しそう・なぁ~んてね。


ハクサンフーロ、シナノオトギリ、ミヤマコゴメグサ、ヨツバシオガマ、ウメバチソウ、エゾシオガマ、ミヤマママコナなど
まだまだ元気な高山植物が縦走路を飾ります。


雷鳥の親子が出てきてくれました。2羽の子供の様子を見ている母さんの優しげなまなざしがいいですね。
逃げようとしないので少し離れた石に腰を下ろし親子を眺めて寛ぎました。


縦走路からヒュッテ西岳の赤い屋根が見えます。
張り出した尾根の南端に赤沢山、奥には涸沢カールの雪渓も望めます。


西岳ヒュッテの手前から登山道をきょう最後の一座西岳に上ります。
常念岳の上空に雲が出てきました。穂高連峰や槍ケ岳はガスが一段と濃くなったようです。

雨を覚悟で下りにつきましたが、降られることもなく槍沢大曲りまで下りてきました。
丁度その時、槍ヶ岳に上った仲間の姿が、グッドタイミングの遭遇、互いの労をねぎらう嬉しい再会でした。



三日目、槍沢ロッジからの下山は、油断は厳禁ですが気分的にはリラックスできます。
周りの景色をゆっくり楽しむことができました。

「落石注意」と槍沢ロッジに掲示があった箇所を慎重に急いで通過します。


オタカラコウの蜜を吸っていたこの蝶はオオムラサキと思って写したけれど、違うようです。
大型の蝶ですが、オオイチモンジ蝶?いや違う、メスグロヒョウモンの雌?



最後までガスは切れませんでした。


2014/08/19 10:30上高地…河童橋10:40…徳沢12:50…一の俣15:10…槍沢ロッジ(宿泊)
08/20  槍沢ロッジ5:15…6:15大曲り6:20…7:20水俣乗越7:25…ヒュッテ西岳8:38
      …2686ピーク8:57…9:09一つ目の崩壊地…二つ目の崩壊地上部トラバース9:14
      …9:17尾根の急下降…鞍部9:23…9:24常念岳の展望…9:28瘤の岩頭を巻く
      …三つ目の崩壊地の上部尾根9:33…赤沢山の上り…9:43赤沢山稜線…9:55赤沢山山頂10:10
      …10:55赤沢山下山2686ピーク…11:04ヒュッテ西岳…11:37赤岩岳直下登山道11:45
      …12:05赤岩岳山頂12:15…12:25喜作新道…12:43ライチョウの親子12:51
      …13:20西岳山頂13:30…14:28水俣乗越…15:10大曲15:25…16:10槍沢ロッジ(宿泊)
   
08/21 槍沢ロッジ5:45…6:13二の俣…6:20落石注意箇所…8:08穂高岳展望…8:50徳沢9:00
     …古池…9:30ハンドパワー…11:20河童橋…11:45バス=沢渡=入浴=奈川(そば)=自宅

 
 

赤沢山・赤岩岳・西岳 北アルプス喜作新道 1

赤沢山 水俣乗越にのぼる途中から見上げる赤沢山
赤沢山と赤岩岳は山頂に通じる登山道がなく厳しい登山を要求されるので躊躇していましたが、
山の会の仲間が槍ケ岳に上ると聞いて、便乗させて貰いました。
槍沢ロッジベースで2日目に其々槍ケ岳と赤沢山に分かれてアタックします。


古池

徳沢

槍沢 水は多めですが清流です。
1日目は自宅を5:00出発、沢渡でシャトルバスに乗り換えて上高地へ、10時30分に歩き始めました。
河童橋、明神、徳沢、横尾、一の俣で休憩を取り、16時に槍沢ロッジに到着しました。
お風呂に入って外のベンチで沢音を背に生ビール、明日の挑戦を控えて贅沢な時を過ごします。


 2日日(8月20日)は曇りがちに夜が明けました。
槍ケ岳組に先だって槍沢ロッジ5:15スタート。
槍沢両岸の切り立った山稜に時折ガスが流れます。
赤沢山から崩れ落ちた赤茶けた岩のゴーロが槍沢の左岸に目を引きます。


大曲で槍ケ岳のルートを離れて右に、水俣乗越のルート(乗越沢)に入ります。
想像していたよりはるかに歩きやすい九十九折道を1時間で喜作新道の水俣乗越に上り着きました。
この峠を北側に下ると北鎌尾根へ、西に上ると東鎌尾根ですが、私は東に喜作新道をヒュッテ西岳に向かいます。


振り返ると、槍の穂先は勿論、槍沢の雪渓や東鎌尾根にも飛騨沢側から越えてきたガスが充満しています。


北鎌尾根は飛騨沢からの影響がまだ薄いようで展望できます。



赤沢山が右手に見えています。
左の山頂部に裸地が見える2686ピークから背後に小さな瘤のある鞍部への下降が核心です。
どうかお手柔らかにと手を合わせる心境です。


8:38ヒュッテ西岳に着きました。
赤沢山に上ることを歓迎しない様子が先達の記録から伺えたので、ここは静かに通り過ぎ奥へ、
テント場になっている2686ピークに進みます。


08/19 10:30上高地…河童橋10:40…徳沢12:50…一の俣15:10…槍沢ロッジ(宿泊)

08/20 槍沢ロッジ5:15…6:15大曲6:20…7:20水俣乗越7:25…ヒュッテ西岳8:38…
      2686ピーク8:57…9:09一つ目の崩壊地…二つ目の崩壊地上部トラバース9:14
      9:17尾根の急下降…鞍部9:23…9:24常念岳の展望…9:28瘤の岩頭を巻く
      …三つ目の崩壊地の上部尾根9:33…赤沢山の上り…9:43赤沢山稜線…9:55赤沢山山頂10:10
      …10:55赤沢山下山2686ピーク…11:04ヒュッテ西岳…11:37赤岩岳直下登山道11:45
      …12:05赤岩岳山頂12:15…12:25喜作新道…12:43ライチョウの親子12:51
      …13:20西岳山頂13:30…14:28水俣乗越…15:10大曲15:25(槍ケ岳組とばったり)
      …16:10槍沢ロッジ(宿泊)
   
08/21 槍沢ロッジ5:45…6:13二の俣…6:20落石注意箇所…8:08穂高岳展望…8:50徳沢9:00
     …古池…9:30ハンドパワー…11:20河童橋…11:45バス=沢渡=入浴=奈川(そば)=自宅

 つづく